デジタル式はかりが普及した現在でも、パン屋さんや和菓子屋さんで使われている上皿さおはかり(通称「上かん」)。田中衡機でも、創業当時から作り続けている昔ながらのはかりです。現在国内で量産しているのは田中衡機のみになってしまいましたが、使っていただいている人がいる限り、私たちにはいつまでも作り続ける使命があります。今回はそんな「タナカの上かん」の、プロダクトとしての美しさ・奥深さを写真と一緒にお伝えできればと思います。
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目次
1.タナカのうわかんラインナップ
2.個性豊かなパーツたち
– 増し台
– 増しおもり・おもり掛け
– 棹(さお)
– 送り錘(おくりすい)
– 水平棒・水平臼
– 皿
– 刃・刃受け
– 調子玉
– ぜんぶ分解してみた
3.まとめ
1.タナカのうわかんラインナップ
現在販売している田中衡機の上かんは、スタンダード仕様と黒染め仕様の2種類です。
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(※)黒染め加工とは、鉄表面とアルカリを化学反応させることにより、鉄表面に黒色で密度の高い酸化膜を形成させる表面加工処理
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2.個性豊かなパーツたち
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次に、上かんを構成する主要なパーツにフォーカスしてみましょう。形も役割もそれぞれ違う、個性的なパーツたちをご紹介します。
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【増し台】
ぶら下がっている銀色のおもりのようなものが、上かんの特徴的なパーツのひとつ、「増し台」です。計量準備の際、ここに「増しおもり」を乗せていきます。 「増し台」は1台1台、はかり本体のクセに合わせて形や重さを調整しています。※正確な計量のためには、はかり本体と同じ型番の「増し台」を使用するようにしましょう。
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【増しお守り・おもり掛け】
「増し台」に乗せる「増しおもり」と、それをかけておく「おもり掛け」。
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【棹(さお)】
「棹」もうわかんの印象的なパーツですね。
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【送り錘(おくりすい)】
棹についている「送り錘(おくりすい)」。物体の重さを1g単位で調べる際に使います。「『増し台』に乗っている『増しおもり』の重さ」+「『送り錘』の目盛位置」=「物体の重さ」になります。(写真の目盛位置は70gなので、「増し台」に100gの「増しおもり」が乗っている状態でつりあえば、物体の重さは170gとなります。)
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【水平棒・水平臼(すいへいきゅう)】
棹の付け根のところから出ている「水平棒」。その名の通り、はかりが置かれた台が “水平かどうか” を判断する際に見ます。「水平棒」が、「水平臼」(白い輪っか)の内側の壁に付いていなければOKです。
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【皿】 写真は並皿(標準型)です。側面が折られていない平皿と、片方だけ折られている片折皿もあります。
〜はかりの豆知識〜
上皿はかりに無くてはならない「ロバーバル機構」
上皿さおはかり(上かん)に限らず、皿(上皿)の付いているはかりの基本原理が「ロバーバル機構」です。 「ロバーバル機構」は17世紀にフランスの数学者ロバーバルにより考案された機構で、一言で言えば「皿のどの位置に物体を乗せても、天秤がつり合う」ための仕組みです。
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【刃・刃受け】
上記の「ロバーバル機構」を成立させるために非常に重要なパーツです。繊細な噛み合わせと強度が必要なため、燕三条地域の職人が1つ1つ鍛造で製作しています。(矢印型に尖っているのが「刃」、それを受けているのが「刃受け」)
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【調子玉】 「棹」が下がっている場合は「調子玉」を写真右側に、上がっている場合は写真左側に移動させることで、微妙なつりあいを調整できます。
【ぜんぶ分解してみた】
上かんを構成する部品たちを、分解してみるとこんな感じ。上で紹介したパーツ以外にも、大小様々な部品で成り立っているのがわかります。これらを機械で組み立てるとどうしても微妙な誤差が生じてしまうため、実は組み立てはすべて手作業。1台1台、職人の手で微調整しながら組み立てて完成する「一点物」なのです。
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3.まとめ
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いかがでしたでしょうか? 手順を守って使用し、定期的なメンテナンスや掃除をすれば、10年でも20年でも、長く愛用していただけるタナカの上かん。現在ご愛用いただいている方にも、そうでない方にも、その魅力が少しでも伝わりましたら幸いです。