さかのぼること2020年6月。
ホームページから、興味深い問い合わせが届きました。
古具店で購入した上皿さおはかりを使えるようにご自身で修理…!?
この方は一体何者なのだろうかと驚きつつも…
肝心のお問合せ、「このはかりはいつ頃作られたものなのか?」
早速調べてみることにしました。
実際にお客様からお送りいただいた写真
手掛かりは下記の通り。
- 「田中製衡所」という社名
- グラムと匁の両方の目盛りがある
- 「大日本・三條町」という表現
①「田中製衡所」という社名
会社の歴史を調べるものの、「田中衡機製作所」という社名を使っていた歴史は1923年ごろにあるのですが、「田中製衡所」は明確な記録が見当たりませんでした…。
②グラムと匁の両方の目盛りがある
「尺貫法」や「度量衡法」が施行されていたころの日本の重さは、「匁」や「貫」という単位が用いられていたことをご存じの方も多いかと思います。
日本で度量衡法が廃止されたのは第二次世界大戦後の1951年。それまでは、匁とグラムの両方の使用が認められていたようです。
参考1:Wikipedia 尺貫法
参考2:Wikipedia 日本のメートル法化
ということは、このはかりは戦前のものである可能性が高くなってきました。
③「大日本帝国・三條町」という表現
弊社の本社がある「新潟県三条市」ですが、1934年に市制が施行されて「三條町」から「三条市」になったようです。
②、③をふまえ、やはりこのはかりは戦前に作られたものでほぼ間違いがないだろうという結論に至りました。
また、お客様から送っていただいた上記の写真の銘鈑に、「MANUFACTURED BY TANAKA」と書かれていますが、戦時中であれば、「敵性語」とされていた英語表記は避けたと思います。
推察の工程が、お宝の鑑定みたいで、大変興味深かったです。勉強になりました。
すぐにお客様にお伝えしたところ、まさか戦前とは、と驚いていらっしゃいました。
そして先日、お客様から修復後のお写真が届きました。
びっくりするほど綺麗に直していただきました…!
とても器用な方でいらっしゃいます。
こんなに古い弊社の製品を見つけていただいて、
修復してまた使っていただけるなんて感激です。
貴重なお問合せ、お写真の提供、HP掲載へのご快諾ありがとうございました。