TANAKAN SHOP でも販売している田中衡機デザインの手ぬぐいは、「小倉染色図案工房」が作成した手ぬぐいです。今回は、小倉染色図案工房の型染作家、小倉充子さんに話を伺ってまいりました!
小倉染色図案工房とは?
型紙作家小倉充子さんが、浴衣、手ぬぐい、着物、下駄の花緒、暖簾など、多様な型染作品を制作する工房です(小倉染色図案工房公式サイトはこちら)。
田中衡機では、手ぬぐいの他に、地域のお祭りに参加する際に社員が使用するための浴衣の制作をお願いしています。
物心ついた頃から、美術分野に進もうと思っていた小倉さん。絵本作家になりたかったり、イラストレーターになりたかったり、はたまた空間デザインがやりたかったりと、色々な分野に興味を持っていらっしゃったそうです。
小倉さんは自身のことを「手ぬぐい作家とか着物作家という訳ではなく、表現手段のひとつとして型染をしているだけなんです。」と語ります。
そんな小倉さんは、言葉通り活躍の場を手ぬぐいや着物だけには絞りません。実は、東京支店がある田中衡機ビルのエントランスホールの壁画も、小倉さんの図案!スタイリッシュながらも、伝統的な重厚さも兼ね備えたエントランスになりました!
その他、小倉充子さんの詳しい経歴や田中衡機関連以外の作品については、小倉染色図案工房公式サイトよりご確認ください!
小倉染色図案工房と、田中衡機の関係は?
弊社代表の田中は、幼少期を東京の水道橋で過ごしました。
小倉さんと田中は、小学校・中学校の同級生なのだそうです。小学1年生、入学してすぐの時に、隣の席になった2人。小倉さんは「田中くんは、かわいらしくて、大人しい子でした。」と、当時を振り返ります。
卒業後は疎遠になっていた2人が再会したのは、今から20年前くらい。田中が代表になる前でした。田中と小倉さんの共通の友人を通して、同級生4人で久しぶりに会ったといいます。
その再会をきっかけにして、その後もよく会うようになった4人。昔話や近況報告に花が咲く中、小倉さんが型染作家だと知った田中は、田中衡機の年始の手ぬぐいを依頼しました。
元々「企業手ぬぐい」に興味があった小倉さんは、喜んで依頼を受けてくださったそうです。
「企業手ぬぐい」というと、現在もご挨拶の品として企業がタオルなどのノベルティを配ることがあると思います。
小倉さんが幼い頃は、タオルではなくて、手ぬぐいを配ることが多かったようで、何度も目にしたことがあったと言います。この企業手ぬぐいが好きだった小倉さんは、田中衡機の企業手ぬぐいが作れる!ということにワクワクして取り組んでくださったそうです。
手ぬぐいのデザインについて
「どれだけ秤をかっこよく魅せるか」がポイントという小倉さん。デザインした際のポイントを聞くと、規格台ひょうと上かんの手ぬぐいについて話してくださいました。
【規格台ひょう】
規格台ひょうのデザインを作った際に、新潟にある田中衡機本社の工場を見学に訪れ、規格台ひょうがずらりと並ぶ姿に圧倒されたそう。
そんな規格台ひょうのポイントは「検定合格証」。もう絶対にこれを入れたかった!と語る小倉さん。
今でもサンプルとしてお渡しした検定合格書を大切に持っていらっしゃると言います。
こちらの検定合格証は、以前「タナカのロゴは何種類?」でも少しご紹介しました。レトロな「田中のハカリ」のフォントが良いアクセントになっていますね。
【上皿棹はかり】
上皿棹はかりの手ぬぐいのポイントは、機械仕掛けの部分をズームして表現しているところ。小倉さんの手ぬぐいは普段、細かい図案が多いといいます。しかし、上皿棹はかりは「部品を魅せていきたい」と考えてのズームでした。
そんな上皿棹はかりの手ぬぐいのデザインを見た田中の職人の中に、「これ、俺が作った部品だ!」
と反応した人がいたといいます。小倉さんはそれがとても嬉しかったそうです。
手ぬぐいの図案は「彫って」作る?
型紙専用の紙を切り絵のように切り抜いて、型紙を作っていくのが一般的。小倉さんももちろんそのように型紙を作るのですが、その前に一度、木版で原画を作るのが小倉さん流。木に彫った時の線の表情がほしいのだといいます。
木版を使うのには、他にも理由があります。実は、型染の図案は絵柄同士が繋がっていることが理想的。それぞれの絵柄が切り離されてしまわないように、図案を作る必要があります。
小倉さんは、紙に絵を描いていくよりも、一度木版に起こす方が、頭の整理ができるのだと言います。
手ぬぐいの染め方
小倉染色図案工房で作る手ぬぐいは、「注染」という日本の伝統的な染色技法で染められています。
注染は、型染の一種。型紙を使って、糊で防染する部分を作ってから染めていく型染の中でも、じょうろのような形の道具で染料を「注いで」染める手法が注染という技法です。
せっかくですから、注染の特長を少しだけご紹介……
★ぼかし染ができる!
色の数だけ型紙が必要な染め方もある中で、注染という技法は1枚の型紙でたくさんの色を染めることもできます。しかも、それだけではなく、ぼかしを作れるというのが大きな特長の1つ。
田中衡機の手ぬぐいにもぼかし染の手ぬぐいがあります。染料と染料の境目がじんわりにじんで、柔らかな風合いです。
★一度にたくさん染められる!
「注染は明治時代に開発された大量生産できる技法なんですよ!」と小倉さん。
注染は防染糊を置いた布を折りたたんで、上から染料を注いで染めていく手法。一度にたくさん染めることができます。とはいえ、一度にまとめられるのは20枚程度ですが、それ以前は1枚1枚染めていたことを思えば、画期的な発明ですよね!
大型の機械などの設備が無い時代でも、そこまでの大量生産ができたんだと聞いてびっくりでした!
まとめ
田中衡機工業所の手ぬぐいや浴衣を数多く手がけてくださった小倉さん。
どのデザインもメーカーらしいかっこよさと、機械らしい緻密さ、そして田中衡機120年(2023年掲載当時)の歴史がどこかレトロな風合いで表現されています。
そんな手ぬぐいの図案ができるまでには、様々な工夫、工程、そしてあたたかなエピソードがあるのだとわかりました。
手ぬぐいの図案のラインナップを知りたい方はこちらの記事から!
おまけ
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