大竹
「国際競争が本格的に始まる。この過渡期はチャンス」
田中
国内の畜産業界で今、どんなことが課題になっているかということを現場に近い皆さんにお聞きしたいと思います。
大竹
病気の予防、人材の確保など、課題は山積みだと思います。ただ、なかでも私は作業の効率化が最も大きな課題だと捉えています。いかに少ない人数で効率よく作業していくかです。私の実家も養豚場なのですが、父親の世代では手間ひまかけるのが養豚の肝だ、徹夜して豚小屋に寝泊まりしているのが偉いといった時代もありました。今はそうではない。
田中
それは人材不足への対応という意味でも必要ですね。
大竹
病気の予防も結局、作業効率につながるんです。病気になった豚を豚舎から出したり、バラツキに対応することには相当な手間がかかります。病気がなければそういった作業はなくて済むわけで、作業効率をいかによくするかと同義だと思います。
神林
その通りですね。EPA、TPP、日米貿易協定が結ばれているなかで、日本の養豚も、欧米と同じ作業効率、生産効率を実現していかなければならない時代が数年以内に来ます。私は今、「改善はデータから」を合言葉に「Porker」という養豚経営支援のソフトウェアでお手伝いさせていただいています。手間ひまかける職人気質な育て方でおいしい豚肉を生産することは、日本の良いところではありますが、後継者がいなくなって続けられないのでは意味がない。育成技術をデータ化して、作業効率を上げながら受け継いでいくことも大事なのではないかなと思います。
大竹
国際競争が本格的に始まるからといって、お先真っ暗なわけではないですね。逆にこの過渡期がチャンス。ここで夢物語ではなく、しっかり将来と現実を分析して、しかるべき準備をしていった人は間違いなく残ります。
田中
農家さんも若返っておられて、新しい考えの方もいらっしゃいますよね。
大竹
そうなんです。Eco-Porkさんや田中衡機さんのITや最新のテクノロジーを現場に落とし込んでいくことができれば、国内の養豚業界のレベルはまだまだ上がります。
小柳
「大群飼育の流れは日本にも。国内メーカーとして支えたい」
田中
オートソーターでは海外メーカーのものを導入した農家さんが、故障が起こったときに直してもらえないと困っておられますね。
小柳
はい。「大群飼育」という飼い方が海外から入ってきたこともあり、オートソーターはまず海外製のものが入ってきました。それをお使いの日本のお客様が故障で困っていて、田中衡機に直せないかとお声がけいただくことがあります。私たちもメンテナンスには力を入れているので、他社製のものでもできる限り、見させていただいています。
田中
海外の展示会などではヨーロッパメーカーの進んだ自動化設備を目にすることもありますが、日本はまだ自動化がそこまで進んでいないように感じます。それはメンテナンスへの不安なのでしょうか。
神林
それもあると思いますし、そもそも海外メーカーが日本の生産者に合った形で設備を提供できていないためだと思います。国内メーカーが生産者と向き合っていけば今後は進展するはずです。育て方の考え方が違うことも海外の自動化設備の導入が進まない理由です。海外では何十頭という大群を豚房に入れておくと、病気の豚と正常な豚が、オートソーティングで計測されて自動で分かれていくという仕組みができている生産者もあります。日本では一頭一頭小部屋で飼育するほうがちゃんと個体を見ながら管理ができ、効率がいいとされています。ただ、大群飼育は世界の大きなうねりとなっており、日本の生産者も対応していかなければならなくなるでしょう。