2023年1月、新製品「デジタフオーシャン DOC-1000」の受注が始まりました。
2017年に開発が本格化し、2023年には特許を取得。
ゆれる船の上ではかれる この はかりは、「デジタルはかりの常識を覆す」チャレンジでした。
「デジタルはかりは、水平で安定した場所でしか使えない」
それがデジタルはかりの常識です。
なぜ、水平で安定していなければいけないのでしょうか?
それは、動きがある場所では重さが変わってしまうから。
あなたがエレベーターに乗った時を想像してください。
エレベーターが上に行くと、身体がぐ~っと重くなりますよね。
上まで到着して止まると、身体がふわっと解放されたようになるはずです。
そして、下に行くときは、逆に身体が伸びたみたいにすぅ~っと軽くなり、
止まると同時にぐんっと下に引かれるような感覚があると思います。
これは「なんとなくそう感じる」のではなく、実際にあなたの重さが変わってしまっているからです。だから、もしエレベーターの中で体重をはかったら、上に行くとき時は体重が増えて、下に行くときは体重が減ります。(YouTubeなどに検証動画があるので、気になる方は検索してみてください)
また、東京スカイツリーなんかの高速エレベーターに乗ると、余計に身体が重くなったり軽くなったりを感じやすくなります。普通のエレベーターは平気だけど、高速エレベーターは気持ち悪くなって苦手…なんて方もいらっしゃいますよね。上下に移動するスピードによっても、この体重の変化の幅が変わります。
これと同じことが、波でゆれる船の上でも起こっています。
波で船が上に持ちあがると、身体が重くなり、波が下がると体が軽くなります。
波はランダムに起こり、波の大きさもまちまちです。
そうすると、船の上のデジタルはかりは同じものが上に載せられているのに、波のゆれに合わせて、重くなってみたり、軽くなってみたりと、計量値が変わってしまいます。
これでは、結局どのくらいの量がはかりに載っているのか分からなくなってしまいますよね。
では漁師さんは、獲った魚の量をどうやってはかっているのでしょうか?
これまで使われてきた船上はかりとして最も代表的なのは、「棒はかり」です。
「さおはかり」と呼ばれることもあります。
上の写真だと、部品が足りていないので、わかりにくいですが、使い方はこんな感じです。
棒はかりは、分銅との釣り合いで重さをはかるはかりなので、
下図のように、はかるものも、分銅も同じくらい揺れていれば、重さをはかることができます。
片手で持てるサイズだけでなく、担ぎ上げるほどの大きさのものもあります。
田中衡機の規格台ひょうも船上で使うことができ、実際に多くの漁師さんにお使いいただいています。使い方や形は棒はかりと異なりますが、分銅を使うはかりなので、揺れる環境でも使える理由は棒はかりと同じです。
しかし、棒はかりや規格台ひょうは、デジタルはかりのように計量台に載せたらすぐに重さが分かる仕組みではありません。自分で分銅を乗せたり降ろしたり、ずらしたりと、操作が必要なはかりです。
※下の動画は上皿さおはかりの動画ですが、規格台ひょうも概ね同じような操作で計量を行います。
慣れてしまえば大した時間はかからないのですが、慣れるまでが大変です。
昔は普通の生活の中にも、棒はかりや規格台ひょうのようなアナログな仕組みのはかりがあったため、みんなが使えるのが当たり前でした。
しかし、今はそうではありません。実際、上の写真のようなアナログなはかりを見ても、どうやって使うのか全く見当もつかない人が多いのではないでしょうか?
普段の生活で棒はかりや規格台ひょうが使われる機会が極端に減ったため、生産量の減少や、製造できる職人の減少が起こり、一台当たりの価格が上がってきてしまっているのも事実です。
そんな事情があったり、遠洋漁業で漁獲量の制限が厳しくなったり……と、従来のアナログなはかりを使い続けることへの限界が見えてきました。しかし、従来のデジタルはかりでは、「水平で安定した場所でしか使えない」ため、船の上など以ての外……
そんな常識を覆したのが、田中衡機の「デジタフオーシャン」です。
開発当時のエピソードは「最新事例:どんな荒波でも、揺るがない精度を実現する」で紹介中です。
ご興味がある方はぜひご覧ください!